猩々奇譚

深夜二時
漆黒の手により揺り起こされた私に
如何して其の時刻を精確に認識する手だてがあったろうか
しかし、其れは紛う方なく深夜二時のことであったのだ
恐るべき夢から目覚めたものの常として
私はその場所がどこであるか暫時解さなかった
薄ぼんやりとした頭で漸く私が古建築の二階に在ることを思い出したとき、
私は私の肉体が不自由であることに気付いた
其れが金縛りであると想すると同時に私の脳裏に一種の映像が飛び込んで来る

私のベッドと平行の位置に在るはずのテレビに何かが覆い被さって居る
私は身体を動かせずただ仰向けで天井の方向しか見えない故、
其れを認識することは不可能なはずだ
抑もこの完全な暗闇のなかで私には私の手の指すら見えるとは思えない
無論目を瞑ることも出来ず、出来たとて意味を為すとも思えぬ
私は其の映像をただ甘受するしか無かった

テレビの上に覆い被さるモノは強烈な邪気を放ちながら蠢く
その一挙手が最早怨念そのものと思える動きで少しずつ胎動する
私に為す術は無い
真黒の中で徐々に其の剥き出しの悪意の正体がはっきりして来る
邪悪な髪、邪悪に黄色く濁る眼差し
あれは、、、


たぬき?

いや、じじい?サルかな?


真酷な悪寒に苛まれた私にして其れを判断することは出来ず、
ただ其れが何処へと過ぎ去ることを祈るしか無かった

暗闇の中で如何とも出来ぬ私を知ってか知らずか、
ジジイのようなタヌキのようなモノは未だモゾモゾしている


私はこの瞬間を永劫に繰り返し、元の世界に還ることはもう無いのかもしれない

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コメント: 2
  • #1

    ゆかり (月曜日, 07 11月 2011 01:48)

    すごく…怖いです…

    「しょうじょうきたん」ではなく「たぬたぬきたん」と読むんですよね。

  • #2

    ゆかり (月曜日, 07 11月 2011 08:37)

    しまった……!
    これは噂のタヌキみたいな顔のジジイみたいなタヌキの話ですよね。
    迂闊でした、不覚にも怖がってしまったではないですか。
    なんだか朝からめちゃくちゃ悔しいです。